TeXにおける参考文献の引用(BibTeX)と文献スタイルファイルcje.bstの微調整版であるcje02.bstの説明をします。
bib_cje02.pdfのようなPDFが作成できます。また、BibTeXを使った日本語文献の引用のコツも紹介をします。
[A]のthebibliography環境を使うやり方では、TeXの中に引用文献のタイトルや著者名を一つ一つ打ち込んでいく必要があります。[B]のjbibtexを使うやり方が、楽で整頓しやすいと思います。このページでは、基本的に[B]のやり方を日本語文献の引用方法などを交えて紹介します。
[A]のthebibliography環境を用いた引用方法では、参考文献もTeXソース内に記入していくことになります。例えば、thebib.texのようなTeXソースからthebib.pdfを作成することができます。本文中に\citeで引用をしていく点はBibTeXと共通していますが、BibTeXで文献データファイルのbibを指定する箇所にthebibliographyで各参考文献を記入します。thebibliographyの参考文献部分は下の画像のようになっており、太字やイタリックも個別に指定する必要があります。
thebibliographyにはTeXファイル一つで管理できるというシンプルさがあり、文献の記入方法を変更するだけで例外的な記載にも対応できます。参考文献の数が少なければ、thebibliographyで書いてしまう方が楽かもしれません。一方で、thebibliographyでは文字装飾を含めて自分で記入する分だけ手間がかかります。スペルミスを含め文献情報を間違えたり、引用形式を間違えたりする可能性が高くなります。また引用形式を変更する場合は、一つ一つの項目を打ち直さなくてはなりません。参考文献の数が多ければ多いほど、BibTeXを使うメリットが大きくなります。
とりあえず試してみたい場合、bib形式を見てみたい場合はlead2amazon.bibを用いてください。
BibTeX標準インストール時から入っているplain.bstを用いて書いたものがbib_plain.texです。日本語文献引用で作成されるbib_jecon.pdfのTeXソースは以下の画像のようになっています。(下の画像は、このページ下部で紹介する.jecon.bstを使っています。)
lead2amazon.bibとbib_plain.texを同じフォルダに置き、複数回コンパイルすると文献情報の入ったdviができます。
さらにdvipdfm(もしくはdvipdfmx)でPDFを作成します。うまくいけばbib_plain.pdfができるはずです。(下の画像は、このページ下部で紹介する.jecon.bstを使って作成したものです。)
dviからPDFの作り方が分からない場合は、以下の手順に従ってください。
他の方法として、dvioutからもdvipdfmxでPDFに変換することができます。
jbibtexでの文献引用では、とりあえず試してみるために、デフォルトのスタイルファイルplain.bstを使いました。しかしbib_plain.pdfにもあるように文中には数字で文献を引用しています。引用文献を照合するためには文章の最後を見る必要があります。経済学において標準的な引用形式であるとともに、引用文だけで文献が分かる『著者(出版年)』の形式にするには、文献スタイル(bst)を指定する必要があります。
英文の学術誌の場合、いくつか標準的なスタイルファイルが用意されています
⇒LaTeX Bibliography Styles Database(bstが一覧になっています。学術雑誌名で検索できます。)
⇒CTAN: directory(カテゴリー別にbst一覧があります。カテゴリ内のbstをzipでまとめてダウンロードできます。)
外国の研究者と共同作業したり、適当なbstファイルを提供する場合は、クセの少ない海外製のbstが好ましいです。Webから取得できる経済学用のbstファイルでクセの少ないものはcje.bstです。これをダウンロードして<\local\share\texmf\jbibtex\bst>に置きbib_cje.texをコンパイルするとbib_cje.pdfができます。
ただ、このbib_cje.pdfにある通り、cje.bstにも『著者が複数いる場合、andの前にコンマがつく』『論文タイトルは、(国名等であっても)小文字変換を行う』といったクセがあります。そこで、この2点を修正してcje02.bstを作成しました。どこを変更したのかも説明しやすく、cje.bibが回るならbibtexでも問題なく回るはずです。cje02.bstを<\local\share\texmf\jbibtex\bst>に置き、bib_cje02.texをコンパイルするとbib_cje02.pdfができます。英語文献のみを引用してレポートを書きたい場合などにも使えます。
BibTeXを使うと数多くの文献を引用しても、bstに従って画一的な参考文献一覧ができます。ただ画一的であるがために融通が利かない面もあり、例外的な手動処理を行いたいこともあります。また海外のジャーナルの文献スタイル(bst)に対して、日本語文献を挿入すると文字化けしたり、名字と名前が逆になったりします。
英語の引用文献がほとんどであっても、日本語文献を少し入れたり、ローマ字表記の後ろに日本語表記を入れておきたい場合があります。こうした場合、文献スタイル(bst)を修正して、引用文献の形式を変えるのは面倒ですし、他の画一的な処理をしたい部分が崩れるおそれもあります。最後の投稿用や公開用だけ手動でReference部を直した方が手っ取り早いです。BibTexでは初めのコンパイルで[bbl]という拡張子でReference部のテキストを出しています。以下の手順で[bbl]を後から手動修正することができます。
という手順で、引用形式の微調整や日本語の挿入を行うことができます。下記の日本語文献用のbstスタイルを使う場合でも、この調整方法は役に立つことがあります。
plain.bstでもcje02.bstでも正しくエンコードを設定し、jbibtexを用いれば日本語は通りますが、日本語文献と英語文献を区別せずに処理を行っています。このためbib_plain.pdf、bib_cje02jp.pdfにあるように日本語文献の共著者を『and』でつないだり、日本人名の名字と名前が入れ替わったりと不自然な引用形式となります。数多くの日本語文献を引用する場合は、日本語文献用の文献スタイル(bst)を使う方が簡単です。
標準的な方法でTeXをインストールすると、jplain.bstやtieice.bst(電子情報通信学会論文用)といった日本語文献用のbstファイルが導入されています。lead2amazon.bibなどの日本語文献を含むbibファイルでも、日本語文献用の文献スタイル(bst)を指定してbib_jplain.texやbib_tieice.texと書けば、bib_jplain.pdfやbib_tieice.pdfといったPDFを作成することができます。
また経済学で標準的な『著者名(出版年)』の形式で文中に挿入できる日本語文献スタイル(bst)を作成してWebにアップロードされている方もいます。
⇒LaTeXの家:スタイルファイル レイアウトサンプル(各bstファイルによるのサンプル出力の一覧、日本語対応bstファイルjep.bstの配布)
⇒経済学で BibTeX を使う(各bstファイルによるのサンプル出力の一覧、日本語対応bstファイルjecon.bstの配布)
これらのWebサイトから文献スタイル(bst)をダウンロードして、使用することで日本語文献を『著者名(出版年)』という形式で文献を引用することができます。『jecon.bst』を用いたTeXがbib_jecon.texです。それをPDF化したものがbib_jecon.pdfです。
引用スタイルのbstと文献情報の入ったbibがあれば、文献情報付きPDFを作成することができます。bibの中身となる文献情報は個々人でタイトルや著者や出版年を書き作成することもできますが、Web経由で取得することもできます。学術論文のBibTeX文献情報ならGoogle:Scholar、書籍のBibTeX文献情報ならLead2Amazonを使えば、簡単に取得することができます。取得方法の説明などはBibTeX文献情報のWeb検索、Amazonのカスタマイズ検索(Lead2Amazon)が参考になるかもしれません。Webブラウザからコピーして、bibに貼り付けるだけで文献情報を足していくことができます。
取得したBibTeXを整理するには、無料の文献管理ソフトJabRefが便利です。JabRefとJab2HTMLを使うと、sample-Jab2HTML.htmlのようなhtml文献リストを作成することもできます。JabRefによるBibTeX文献管理とJab2HTMLが参考となるかもしれません。